人には心の奥に『原風景』というものがあるらしい。
私の場合は“真っ赤な夕焼け”だろう。
その前に私の母の原風景について話しておきたい。私の母は戦前6歳の時に母を亡くしている。その臨終の時病室から出された母は、非常階段のベランダから目の前に広がる操車場の中で貨物列車が行きかうのを眺めていたらしい。
一度だけそんな話を聞いた。別に「それが原風景だ」などとも聞かされていないが、私の中では見たわけではないその光景が強烈にイメージされている。おそらく母にとっては忘れられない光景だっただろう。
さて話を戻すと、私は六つ違いの妹を21歳で亡くしている。入院中許す限り病室に通っていたが、ある日の夕暮れ見事な夕焼けを見た。妹と共に病室の窓から空を見たが、ふと見ると周囲のビルの窓からも人々が空を見上げていた。その夕焼けが忘れられない。
今でも美しい夕焼けを見ると胸が痛む。
『原風景』皆さんはどうだろうか?