政治はプリティダービー2
~記憶に残る名レース(選挙)~
令和4年7月10日の第26回参議院議員通常選挙の投開票日まであと数日。報道各社の情勢分析もほぼ出そろいつつある。
選挙に行かない若者たち曰く「投票前から結果は見えている。」「たかが一票で結果は変わらない。」とシラケてしまっている。
さにあらず、選挙は蓋を開けてみなければわからない。競馬のレースと同じドラマなのだ。
競馬でもレースには本命馬がいて、多くの場合本命馬が勝つ可能性が大きい。選挙も同じで、事前の情勢分析はその通りになる場合が確かに多い。しかし時にはそれを覆す大どんでん返し、競馬で言えば大穴が来るときもある。そのレース選挙を目にしたとき、政治の面白さを覚えずにはいられない。
これまでの選挙で心に残った名勝負(選挙)を挙げてみる。
第18回参議院議員通常選挙(平成10年7月)
事前の予想で『自民党堅調』と、総じて自民党の優勢が伝えられていたにもかかわらず、自民党が大惨敗し橋本龍太郎総理が引責退陣した。
この選挙は確か『無風選挙』と言われ、世間には「大して変わらない」という雰囲気が漂っていた。しかしマスコミは報じなかったが「なんかおもしろくない」という漠然とした不満感が人々の中に漂っていたように感じる。投票日昼頃からあれよあれよと投票率が上がりだし、終わってみれば前回より14ポイント増の59%。60議席と予想されていた自民党の獲得議席は16減の44議席にとどまり、橋本総理はその日に退陣表明した。
後日自民党の幹部はつぶやいた。「風なんて吹いていなかったんだ。その日(投票日)の朝までは」
第44回衆議院議員総選挙(平成17年9月)
いわゆる『郵政解散選挙』である。
この時自民党は「選挙をやったら絶対負ける」と言われていた。(前任の森総理は支持率一桁で自民党の自虐CMが話題になっていた。)
にもかかわらず小泉純一郎総理は衆議院解散に突き進んだ。“干からびたチーズ事件”は有名である。まさしく乾坤一擲の大博打は的中し、“刺客”“くノ一”“ホリエモン”と民衆の心をわしづかみにして圧勝した。
逆に、勝てるはずだった民主党(岡田代表)は政局化を狙って自民党の混乱を傍観した挙句、小泉劇場に埋没して大惨敗した。
賛否はあるものの、いざとなったら一か八かの勝負を打つ度胸は多くの支持を受けることを証明した。
余談だが、維新はこういった勝負選挙が得意である。平成23年の橋下徹の大阪府知事から大阪市長への鞍替え選挙、平成31年の松井一郎と吉村洋文の大阪府知事と大阪市長のクロス選挙、反対派は非難するがリスク覚悟の政治勝負な以上“勝ったもん勝ち”だろう。もっとも野田佳彦総理(民主党)による解散のように必ず成功するとは限らない。
第48回衆議院議員総選挙(平成29年10月)
「安倍晋三総理のモリカケ隠し」が批判され、自民党がどれだけ減らすか?安倍総理の責任問題になるか?と自民党の負け覚悟、野党の『イケイケ』でスタートした選挙である。しかし本命視されていた希望の党が小池代表(都知事)の「排除いたします(キリッ)」で大コケ、自民党がまさかの差し切りを演じた。
その中でもう一つ、マスコミが報じず私が感じたのは日本維新の会の不振である。私見だが維新の支持層は“保守”で安倍総理のシンパと重なる。これまでは大阪などではアンチ自民の保守は維新に流れていたのが、この選挙では『安倍危うし』で自民へのシフトが起きたと考えている。その証拠に次の総選挙(令和3年10月)では維新が躍進し大阪自民が全滅している。
このように、選挙では様々なドラマが生まれる。一票は“大河の一滴”。自分の投票が奔流となって劇的な結末を引き起こすのを目の当たりにすれば、もう病みつきになること間違いない。(笑)